若き日の鷹夫先生

石田波郷と鶴足立句会。当時は父がつけた俳号の容風を名乗っていました。

鈴木鷹夫『渚通り』25句

鈴木鷹夫 第一句集句集『渚通り』昭和54年
勤抽

二階より素足降り来る桜鍋 
土掘れば湧く水暗き半夏生
帯巻くとからだ廻しぬ祭笛       
明日海へゆく夕焼に泳ぐ真似           
柴栗の二つ三つは眠き数               
目薬の一滴波郷忌が近し
熱湯へ水すこし足す桜の夜
向日葵に煙のごとく老婆来る
子へ妻へ野の虹見たる証し欲し
指組めば指が湿りぬ桜草
白菖蒲剪つてしぶきの如き闇
悪友に似て十薬の花点々
首出して筍二本愕き合ふ
   信州穂高町
山葵田の彼方の水も青世界
ホテルに傘忘れ日が過ぐ巴里祭
秋空がまだ濡れてゐる水彩画
薄目ならむこの波郷忌の綿虫も
見得切りしまの枯兆す菊人形
哲人のごとくぼろぼろ檻の鷹
風花は空の音楽妻と聴く
根が赤きこと恥かしきはうれん草
メロン買ふために曲がりぬ渚通り
人は子を産み枯菊は火を待てり
暮れて着く男がひとり鮎の宿
忘年や酔のうしろの真の闇