桜草は、花弁の先に桜のような切れ込みを持つことから名付けられた。4月から5月にかけて、一つの茎からいくつかの花を咲かせる。桜よりは色が濃いが、鉢植としては丁度よい色合いだ。河川敷など湿った草原に自生するが、乱獲されたことから群生地がいくつか消滅した。古典的な園芸植物で、江戸時代は武士の愛好家が多かったと聞く。帯発行所の桜草は数十年前に近所の方から株分してもらったもので、浦和の田島ヶ原の原種らしい。上品な花で、俳句にも品が滲み出る。
鉢の土乾きてかなし桜草 富安風生
指組めば指が湿りぬ桜草 鈴木鷹夫
たちまちにわかる声なり桜草 長浜 勤
(長浜勤)
身辺歳時記では帯発行所の庭にある植物を中心にご紹介します。これだけあれば秀句が詠めるはず、という声もあります。すべて私の母が集めた季語となる植物ですが、もったいないので写真だけでも公開します。